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一九世紀「英国」小説の展開

(編著)海老根宏   (編著)高橋和久  

解説

19世紀英国小説研究の新しい傾向を踏まえつつ、「小説を読む」意味を問い直す。ウォルター・スコットからコナン・ドイルまでの重要な作家の作品論を、幅広い世代の19人の論者が展開する。海老根宏によるサッカレーとジョージ・エリオット論も、長きにわたってその読解に新たさがあることに気がつかされる。

目次

一九世紀「英国」小説を読む(いくつもの)理由――序に代えて 海老根 宏
第1章 距離と分類──スコット『ウェイヴァリー』をめぐって 高橋和久
第2章 マライア・エッジワースと帝国、ファッション、オリエンタリズム 吉野由利
第3章 スコットランドの風俗小説──スーザン・フェリアとブリテンの家庭/故郷 高桑晴子
第4章 ジェイン・オースティンの風景論序説──ピクチャレスクからイングランド的風景へ 丹治 愛
第5章 ジェイン・オースティンとロイヤルネイビー──「ジェイン海軍年鑑」をどう読むか? 山本史郎
第6章 ゲームの規則──『自負と偏見』再読 小山太一
第7章 『虚栄の市』の人びと 海老根宏
第8章 “Strange extravagance with wondrous excellence” ──『ジェイン・エア』と『歌姫コンシュエロ』の間テクスト性 大田美和
第9章 声に出して読むディケンズ 斎藤兆史
第10章 『デイヴィッド・コパーフィールド』における記憶と家族 永富友海
第11章 始まりも終わりもない物語──ジョージ・マクドナルド『ファンタステス』における光と闇 鵜飼信光
第12章 死者と亡霊の間──シェリダン・レ・ファニュ “The Familiar” を読む 桃尾美佳
第13章 ジョージ・エリオットにおける現実と非現実──「これらは一つの比喩である」 海老根 宏
第14章 『リチャード・フェヴレルの試練』における仮面の衰亡 丹治竜郎
第15章 ハーディ小説にみる動物の痛み 吉田朱美
第16章 「虎の如き威厳」と「ジョン・クリーディ牧師」──コンラッド『闇の奥』と一九世紀末イギリスの言説 西村 隆
第17章 共同体、社会、大衆──コンラッドと「わたしたち」の時代 中井亜佐子
第18章 ジョージ・ムアの『一青年の告白』における時代の文脈 結城英雄
第19章 『ドリアン・グレイの画像』におけるニヒリズム 田尻芳樹
第20章 再生コナン・ドイルと不条理劇の系譜 山田美穂子
あとがき 高橋和久 

事項索引/人名・作品名索引 

メディアほか関連情報

■ 「図書新聞」2015年2月7日号に掲載されました

しがらみと自然描写を特徴とする文学ジャンルとして一九世紀英国小説が挙がるのは異論がないだろう。本書はそのことを知るには最適の書物だ。確かに似たような論文集はあるだろうが、その包括性と個々の論文のレベルの高さは群を抜いている。歴史小説からナショナル・テイル、リアリズム、女性作家の登場、ポストコロニアリズム、そして推理小説の萌芽。これらの継起が英国文学を活気づけるさまがよくわかる。(川島健・同志社大学文学部准教授)

著者紹介
  • 海老根宏

    1936年生まれ。東京大学名誉教授。1962年、東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。シカゴ大学大学院修士課程修了。大阪大学教養学部、東京大学教養学部を経て同文学部教授。1996年、東洋大学文学部教授。2007年、東洋大学退職。共著・共編著に『講座英米文学史9 小説 II』(大修館、共著)、『週刊朝日百科12 ディケンズ、ブロンテ姉妹ほか』(朝日新聞社、共編著)、『ジョージ・エリオットの時空──小説の再評価』(北星堂、共編著)、『20世紀英語文学辞典』(研究社、共編著)。翻訳にノースロップ・フライ『現代文化の百年』(音羽書房)、ジョン・ベイリー『トルストイと小説』(研究社)、デイヴィッド・ストーリー『救われざる者たち』(集英社、共訳)、ライオネル・デヴィッドソン『チェルシー殺人事件』(集英社)、ノースロップ・フライ『批評の解剖』(法政大学出版局、共訳)、W・J・T・ミッチェル『物語について』(平凡社、共訳)、ジョージ・スタイナー『アンティゴネーの変貌』(みすず書房、共訳)、シャーロット・ブロンテ『ブロンテ全集1 教授』(みすず書房、共訳)、ジェイムズ・ジョイス『スティーヴン・ヒアロー』〈世界文学大系68〉(筑摩書房)。

  • 高橋和久

    1950年生まれ。東京大学名誉教授。京都大学卒業、東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。著書に『エトリックの羊飼い、或いは、羊飼いのレトリック』(研究社)、『別の地図──英文学的小旅行のために』(松柏社)、『ラドヤード・キプリング──作品と批評』(松柏社、共編著)。翻訳にアラスター・グレイ『哀れなるものたち』(ハヤカワepi文庫)、ジェイムズ・ホッグ『義とされた罪人の手記と告白』(白水Uブックス)、ジョージ・オーウェル『一九八四年[新訳版]』(ハヤカワepi文庫)、ジョゼフ・コンラッド『シークレット・エージェント』(光文社古典新訳文庫)、ピーター・バリー『文学理論講義──新しいスタンダード』(監訳、ミネルヴァ書房)など。

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