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百年の記憶と未来への松明(トーチ)/二十一世紀英語圏文学・文化と第一次世界大戦の記憶

(著者)霜鳥慶邦  

解説

第一次世界大戦百周年をめぐる世界的動向を踏まえた視座から21世紀英語文学・文化における大戦の記憶の諸相を明らかにする。

ここに起こっている現象は、ナショナルな枠の内部で形成・継承されてきた戦争の記憶を批判的に乗り越えるための21世紀的想像力を養成してくれるはずだ。

目次

序章 百年の記憶、百年目の責任

第一章【イギリス】 永遠のウィルフレッド・オウェン

第二章【イギリス】最後のトミー、すべてのトミー──ハリー・パッチが語る戦争の記憶

第三章【イギリス】〈大戦世代〉不在の時代に──キャロル・アン・ダフィ「ラスト・ポスト」と傷の記憶/記憶の傷

第四章【ベルギー】三万回の「ラスト・ポスト」が鳴り響くとき──メニン・ゲートという記憶の場/観光の場

第五章【カナダ】癒やしと和解への長い旅路──ジョゼフ・ボイデン『三日間の旅路』とカナダ先住民の「闘い」

第六章【オーストラリア】歴史のトリアージ──トマス・キニーリー『マルスの娘たち』における歴史記述の倫理

第七章【アイルランド】異教徒たちだけが存在する世界で──セバスチャン・バリー『遥かなる路』における「よそ者」たちの記憶

第八章【パキスタン】二十一世紀のヘロドトスたちとスキュラクスたち──カミラ・シャムシー『すべての石に宿る神』における「忠誠」

第九章【イギリス】二十一世紀の『イン・メモリアム』──セバスチャン・フォークス『かつて我が心が鼓動を打っていた場所』における記憶の美学

終章 『土曜日』の気分、『秋』の気配、未来への松明(トーチ)

あとがき

引用・参考文献

人名・作品名・地名・事項索引

メディアほか関連情報

■『日刊ゲンダイ』(2020年8月22日)、『日刊ゲンダイDIGITAL』(2020/08/22公開)の〈改めて振り返る戦争本特集〉に取り上げられました

印象的なのは、2009年に111歳で他界した第1次世界大戦時のイギリス陸軍兵士、ハリー・パッチの物語と、その死後に追悼のために書かれたキャロル・アン・ダフィの創作詩「ラスト・ポスト」だ。戦争を過去のものとして処理したがる風潮に対して、文学がどのような役割を果たすことができるのか、さらにこれからの世紀に残すべき記憶とは何か、自問させられる。https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/277620

 

■『週刊読書人』(2020年10月23日号)に書評が掲載されました

 本書は、第一次世界大戦勃発百年の前後に、英語圏のひとびとが、主として詩と小説をつうじて、第一次世界大戦の記憶とどのように向き合おうとしていたかについての、きわめて誠実なレポートである。「英語圏」とひと言でいっても、イギリスはもとより、ベルギー、カナダ、オーストラリア、アイルランド、パキスタンと、著者が関心を寄せてきた地域はまさしくグローバルに展開している。しかも、多くの地に著者は自ら赴いて、いわばその地のひとびとの気配を肌で感じながら、膨大な英文テクストを読みこなしているのだ。本文には、著者自身が撮影した、第一次世界大戦の記憶と関わるモニュメントなどの、優れた写真が多数配されている。
 本書を読むと、まさしく第一次世界大戦勃発百年を期に、英語圏においてその記憶をめぐってさまざまな力がせめぎ合っていることがよく分かる。(細見和之/京都大学教授・ドイツ思想)https://dokushojin.com/review.html?id=7748

 

■『図書新聞』(2020年12月5日号)に書評が掲載されました

誤解をおそれずに言うならば、第一次世界大戦はさまざまな文学と文化を生みだしてきた豊饒な事象であることをこの著書は証明している。多くの地域と人々を四年間にわたり強く縛り続けた巨大なエネルギーを前にすると、この戦争を如何に把握し、表現すべきなのか戸惑ってしまう。作者は多岐にわたる資料を丹念に考察することによって、第一次世界大戦の多面性の一端を確実に照らし出している。(河内恵子/慶應義塾大学)

 

■同書が第6回咲耶出版大賞特別賞を受賞しました

https://sakuyakai.net/2952/

 

■『英文學研究』(英文学会)2021年12月1日・第98巻に書評が掲載されました

著者はもともとD. H. ロレンス研究に従事し、大学院時代より学会で注目されてきた。それが「第一次世界大戦の記憶」研究に赴いたのは、福島での苦しい経験があったからだ。霜鳥は、「二〇一一年の出来事は、文学研究に対する私の姿勢を、不可逆的と言ってよいほどに変えた瞬間であった」(385)という。(荒木正純/筑波大学名誉教授)

著者紹介
  • 霜鳥慶邦

    大阪大学言語文化研究科准教授。大阪外国語大学言語社会研究科言語社会専攻修了。専門は、英語文学、第一次世界大戦の記憶の総合的研究、D・H・ロレンス。著書に『百年の記憶と未来への松明(トーチ)──二十一世紀英語圏文学・文化と第一次世界大戦の記憶』(松柏社)、『文学理論をひらく』(分担執筆、北樹出版)、『ロレンスへの旅』(分担執筆、松柏社)、翻訳には『D. H. ロレンス書簡集 VI──1915』(分担翻訳、松柏社)。

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