松柏社

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ゴシックと身体/想像力と解放の英文学

(著者)小川公代  

解説

家父長制に抗う女たちがもちいたものこそ、“ゴシック”の戦術だったのではないか

メアリ・シェリー、アン・ラドクリフ、メアリ・ウルストンクラフト、ウィリアム・ゴドウィン、ロバート・マチューリン、エミリー・ブロンテ、シェリダン・レ・ファニュらゴシック作家たちの作品を読み解く先に見えるものとは──

 

▼ 本書の序論は弊社webマガジンでお読み頂けます:

『ゴシックと身体──想像力と解放の英文学』の序論公開

 

目次

“ゴシック”という戦術◆序論にかえて  

“ゴシック”の政治性  
想像力と倫理の二本柱 
“ゴシック”という戦術

 

第1章◆ラドクリフ『ユドルフォの謎』──生気論と空想のエンパワメント  

「空想」の隠されたラディカル性  
「受動的」刺激から「能動的」刺激へ  
ヒロインの天賦と生気論 
空想の力

 

第2章◆ラドクリフ『イタリアの惨劇』──人権侵害に抗する  

フランス革命の余波とゴシック小説の変遷  
虚構としての修道院・宗教裁判所  
想像力と近代的自己  
ラドクリフが描く超自然

 

第3章◆ゴシックにおけるヒロイン像──ウルストンクラフトのフェミニズム  

ヴォルニーの自己保存の思想  
ウルストンクラフトの『女性の虐待あるいはマライア』  
ルーカスの『地獄のキホーテ』とデイカーの『ゾフローヤ』

 

第4章◆ゴドウィンのゴシック小説──理性主義と感受性のあわい  

『ケイレブ・ウィリアムズ』──理性と共感のあいだ  
ウルストンクラフトの共感──女性・機械・動物  
『セントレオン』──多孔的になる自己  
ゴドウィンの葛藤

 

第5章◆シェリー『フランケンシュタイン』──バラッドに吹き込む精気  

ポリドーリの科学的視点から考察される〈情念〉と〈夢〉  
伝承バラッドと幽霊物語  
「不実の恋人の物語」として読む  
“フェミサイド”の再話としての『フランケンシュタイン』  
「怪物」の創造

 

第6章◆マチューリン『放浪者メルモス』──家父長的な結婚を問う  

『野生のアイルランド娘』のグローヴィーナと『メルモス』のイマリー  
楽園喪失──イマリーとモンカーダの「無常」  
マチューリンの急進思想──婚姻の正統性とは?  
マチューリンの想像力とは?

 

第7章◆ブロンテ『嵐が丘』──魂の生理学、感情の神学  

〈教会離れ〉と〈スピリチュアリティ〉の矛盾  
メソディズムの感受性文化──〈国教会〉と〈非国教会〉の矛盾  
物質/身体と霊の融合  
解き放たれるスピリチュアリティ

 

第8章◆ヴァンパイア文学から#MeTooまで──〈バックラッシュ〉に抵抗する

一九世紀の怪物的なるものと#MeToo  
レ・ファニュの「吸血鬼カーミラ」  
新しいヴァンパイア  
ジャック・クレイトンの『回転』における性の抑圧  
恋愛メロドラマからLGBTQたちの声上げへ  
アクチュアルなテーマがよみがえる必然性  

 

註  
あとがき
初出一覧
引用・参考文献  
人名・書名索引

メディアほか関連情報

■『週刊読書人』2024年5月3日号(4/26合併号)の1面に「"魔女"たちの戦術と抵抗 『ゴシックと身体 想像力と解放の英文学』(松柏社)刊行を機に」が掲載されました。堀川夢さんによる著者・小川公代さんへのインタビューです。

ウルストンクラフトとゴドウィンは現実世界で家事やケア労働をどう分担したか、それが小説にどう影響したか。時に想像を巡らせることも、批評には必要です。(抜粋)

 

2024年4月26日(金)19:30~、twililightにて『ゴシックと身体』(松柏社)&『レディ・ムラサキのティーパーティ』(講談社)刊行記念トークイベントが開催されました。

小川公代&森山恵 “ゴシック”と“らせん”がもたらすもの

 

■2024年5月15日(水)19:00~、隣町珈琲開催、近内悠太「ケアと利他、ときどきアナキズム」第16回ゲストとして『ゴシックと身体』の著者・小川公代さんが登壇されました。

 

■2024年6月1日(土)16:00〜17:30、今野書店にて『ゴシックと身体:想像力と解放の英文学』(松柏社)&『女の子たち風船爆弾をつくる』(文藝春秋)W刊行記念トークイベントが開催されました。

小川公代&小林エリカ「目に見えないものと身体」

 

■2024年6月15日(土)に〈朝宮運河のホラーワールド渉猟〉小川公代さん『ゴシックと身体』インタビュー 家父長制に抗った女性たちの“戦術”が〈朝日新聞デジタル 好書好日〉に掲載されました。

https://book.asahi.com/article/15303807

 

■『NIGHT LAND Quarterly』vo. 36(アトリエサード発行、2024年7月刊)で小川公代さん『ゴシックと身体』が紹介されました。

(一部抜粋)……新鮮のはこの観点から、エミリー・ハリス監督の映画『カーミラ 魔性の客人』(2019)を論じていること。これまでの『カーミラ』のアダプテーションに比べて、吸血鬼色を薄め、代わりに「夢」のイメージを強調して重要な意味を与えながら、家父長制の価値観を鋭く批判している点だろう。──岡和田晃 氏

著者紹介
  • 小川公代

    1972年、和歌山生まれ。上智大学外国語学部教授。ケンブリッジ大学政治社会学部卒業。グラスゴー大学博士課程修了(Ph.D.)。専門は、ロマン主義文学、および医学史。著書に、『ケアの倫理とエンパワメント』『ケアする惑星』『翔ぶ女たち』(以上、講談社)、『世界文学をケアで読み解く』(朝日新聞出版)、『ゴシックと身体──想像力と解放の英文学』(松柏社)、『文学とアダプテーション──ヨーロッパの文化的変容』『文学とアダプテーション2──ヨーロッパの古典を読む』(ともに共編、春風社)、『ジェイン・オースティン研究の今』(共著、彩流社)、『感受性とジェンダー──〈共感〉の文化と近現代ヨーロッパ』(共編、水声社)、訳書に、シャーロット・ジョーンズ『エアスイミング』(幻戯書房)、サンダー・L・ギルマン『肥満男子の身体表象』(共訳、法政大学出版局)などがある。

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